b/c 143 -第9話-
助手席に弟を乗せ東大病院へ車を走らせる。バス通りの桜はもう散りはじめていた。少し開けた窓からはうららかな空気が入ってくる。「本当にバス停のあたりでいいの?」「う […]
助手席に弟を乗せ東大病院へ車を走らせる。バス通りの桜はもう散りはじめていた。少し開けた窓からはうららかな空気が入ってくる。「本当にバス停のあたりでいいの?」「う […]
きょうこそナポリタンにしようと思った。「ご注文は?」「あっ、えっと・・・カレーライス」「大盛り?」「お願いします」こういうことだ。そして、いつものようにおいしく […]
目白通りから右折して不忍通りへ入る。いつもは右レーンだが、きょうは左レーンへ。平日の午後9時過ぎ。不忍通りはまだそこそこに混んでいる。少し走り、交差点の手前、ハ […]
その初老の男性に気付いたのは、アルバイトを始めて半年ほど経った頃だった。この関口フランスパンにはカフェも併設されていて、その男性は週に一度はモーニングを食べに来 […]
「あっ、ボク知ってます、これ」英文科に通うヤツは、そう言って一瞬ニヤッと笑った。「なんだよ、これ」「さて、なんでしょう?」「おいおい、知ってるなら教えろよ」「う […]
「聖橋門から入り大成殿を左手に見て、 そのまま堀に沿ってまっすぐ進む、と」送られてきたメッセージを確認しながら石畳を歩く。連なる木々は、深まる秋の色に染まりはじ […]
泣き虫、弱虫、くよくよ虫。 よく言えば、センチメンタルな性格。 例えば、道でちょっと転んだだけでも 痛さで、わーわー、 慰めてもらっては、しくしく、 転んでしま […]
「じゃあね」 僕らはいつも鐙坂(あぶみざか)の入り口で別れた 君の住む家はこの坂の上 僕の住む家はこの坂の左 ちらちらと雪が舞う夜 こんな夜が君は好きだった い […]
大きくひとつため息をつく。会話がない。 兄と二人で出かけるなんて何年ぶりのことだろう。 小さい頃はよく一緒にいた。 むしろ私がひっついていた。 いつからだろう、 […]