BB坂ノ途中 変態読書のススメ

第5回 写真のない料理書籍は本当にあり得ない?

いらっしゃいませ。
ようこそBook Bar 坂ノ途中へ。
ここは、編集者RとKのふたりが営むバー。本日は本を舌で味わいたいRが店番です。

お客様、もしかしてメニューをお探しでしたら申し訳ありません。当店はなにしろ店員が気まぐれで、仕入れ・調理もその日の気分次第のためメニューを置いていないんです。といっても、“ぼったくりバー”ではないのでご安心を。酒は、ビール、日本酒、ワイン、ウイスキー、その他のスピリッツ。お好みをおっしゃっていただければあるものの中からご用意いたします。

そもそもメニューって、わかりやすいようでわかりにくい。そう思いませんか? オムレツやステーキなど、誰でもわかるものならいいですが、“ホウボウのマダガスカル風ベニエ”なんて言われてもわかりませんよね。あ、今のは適当に言ったので、たぶんこの世にはあり得ない料理ですから、検索などしないでくださいね。

とにかく文字だけで伝わる情報は、ほんの少しです。でも、人間には想像力という、他の動物にはない武器がある。目に見えるものを想像力で補いながら、人は暮らしているんですよね。これを駆使しないともったいないじゃないですか。

というわけで当店にメニューはありませんが、美味しい食べ物のレシピが詳細に載った料理本のほか、食べ物をテーマにした小説などもかなり揃えています。その右手の棚にあるので、よかったら手に取ってみてください。

ええ、そんな本を読みながら料理を作ってみるのが楽しいんですよ。材料に分量、詳細なレシピや完成写真、手順写真がなくたって何とかなるものです。いや、むしろ細かく書いてない方がいいこともあるかもしれない。しょっぱいのが好きな人もいれば、苦手な人もいる。塩梅というのは人それぞれですからね。

要は料理も想像力が大きな部分を占めるという話です。よく料理番組とかで、なにかの材料の代用は? なんて質問が紹介されますけど、それはせっかくその料理を考え、綿密に計算してレシピを作った人に失礼じゃないかって思いませんか? ま、その点、詳細な説明のないレシピは自由でいいですよ。って、まるで自分が適当に料理していることの言い訳みたいですみません。

今日は何にいたしますか? ちょうど香りの高いヒラタケがあるので『パリっ子の食卓』という本に出ていた「ボルドー風セープ茸」というお料理をお出ししましょうか。フランスも日本に負けず劣らず、秋はキノコが豊富に出回るらしいです。セープ茸に近づけるかどうかはわかりませんけれど、ちょっとヒラタケで頑張ってみます。どうぞ今夜もごゆっくり。

 

【今回紹介した本】
佐藤真『パリっ子の食卓―四季の味90皿』(河出書房 1995年刊)
(※単行本は絶版。現在文庫が発売中)
著者は少年時代から「暮らしの手帖」を愛読し料理に開眼。2度のフランス留学ののち、パリの日本語新聞「オブニー」の創刊に参加。そこで連載した料理コラムをまとめたのがこの本。料理にまつわるエピソードも楽しくフランスの普通の料理を知ることができる。

文:R