Piece -本郷・湯島をかたち創る人・場所を訪ねて-

本が好きな人と人がつながる湯島の箱貸し本屋 「はこハブ―Haco Hubooks」

あなたは本を読む派ですか?

電子書籍より紙の本で読みたい派ですか?

一度読んだ本には愛着が湧いてしまう派ですか?

自宅の本棚が満杯で本が床まで占領し始めている派ですか?

これはよかった!と思った本を誰かにおすすめしたいと思う派ですか?

上記1つでも当てはまった方はぜひこの記事をお読みください。

本記事では本当に本を愛する人のためのスポットをご紹介したいと思います。

場所は文京区湯島。レトロな雰囲気が残るビルの2階最奥にある「Bookstore & Gallery 出発点」という小さな書店が、今年5月より「はこハブ―Haco Hubooks」というシェア本箱をスタートさせた。

近頃「シェア型書店」「棚貸し本屋」といった特定の小さなスペースを間借りして自分だけの書店を開く新しいスタイルの古書店が、じわじわと増え人気を集めている。本好きであればご存知の方も多いだろう。学問の神様を祀る湯島天神のお膝元であるここ湯島のシェア型書店は、知る人ぞ知る秘密基地的なスポットとなっている。

ここの面白いところは「箱貸し本屋」であること。そう、本箱の名の通り本当に“箱”を借りるスタイルなのだ。しかもこの箱、そんじょそこらの箱ではない。なんと那須の宮大工に依頼して特別に作ってもらったという、はこハブのためのオリジナル木箱である。大型本もすっぽり入る高さ・奥行き、そして重さに耐える頑丈な特別設計。そう、本って集まるとけっこう重さがある。

店内には何とこの木箱が50個も積み上げられているのだ!

つまり、この小さな書店の中にさらに小さな“書店”が並び、それぞれに箱主がいる。小さな書店のオーナーというわけだ。箱主ごとに自身の箱書店に置く本にもこだわりがある。小さな木箱に置ける本は数が限られる。だからこそ箱主は、自分が最もおすすめしたい本をチョイスしているだろう。

本好きとしてはこんなにワクワクすることってあるだろうか?

(Bookstore & Gallery 出発点については こちら

それぞれの箱には、やはり箱主の個性やテーマが見て取れる。そして、その一箱一箱には箱主と本とのエピソードが詰まっている。

新幹線の中で読んだ本を東京到着後その足で納めにくる箱主、自身の著作を並べる箱主、そしていつか自分の書店を開きたいという目標を持っている箱主。きっとこの方にとって、このはこハブは小さくとも記念すべき一号店になるのだろう。

木箱の中には、箱主目線で書かれた紹介文が添えられた本、丁寧にペーパーブックカバーがかけられている本、図書目録が置かれているものなど…。箱主ごとに本に対するこだわりや愛着が納められていた。

さて、そんな箱貸し本屋「はこハブ―Haco Hubooks」を始めたきっかけを、運営元Bookstore & Gallery 出発点の点主である廣岡さんに聞いてみた。

「この場所が本をきっかけに繋がれる“ハブ”的な場所になったらいいなと。僕だけの視点じゃなく、本好きさんによる違う視点があるって新しい出会いのきっかけになるだろうしね。昔からずっとそう思っていた。でもいざ自分が書店を開くとなって、最初から他の人に委ね切ってしまうのもちょっとどうなのかなと思ってしまって…。3年は自分の色の店を運営してきた。そういった中で、やっぱり人が集える場所にしたいと思って、今年思い切って一角を箱貸し本屋にしたんだ」

確かに、人の本棚を眺めるほどおもしろいことはない。それは蔵書の数々に、その人の思考や趣味、生い立ちなどが垣間見られ、持ち主のアイデンティティーを形成するにいたるプライベートな部分を覗き見た感覚になるからかもしれない。それほど、他人が読む本というのは惹きつけられるものがある。シェア型書店の流行ポイントはきっと、そういった他人の本棚を覗き見る感覚が少し味わえるからではないかと思う。そして、自分にはなかった視点や、発見、出会いなどに触れることによって、新たな本との出会い、また本の持ち主との繋がりができていく。それはまさに廣岡さんの思い描く「本をきっかけに繋がれる“ハブ”的な場所」なのだと改めて思う。だから“箱”+“ハブ”で「はこハブ―Haco Hubooks」というネーミングはしっくりくる。

ところで、はこハブが設置されている出発点という店は、先に紹介した通り昭和の風情残るレトロなビルに入っているのだが、人通りが多い道に面しているわけでなく、ましてやちょっと怖い薄暗い階段を2階に登った最奥に位置する(筆者はこのちょっと怖い薄暗い階段が売りだと思っている)。そのため、連日ひっきりなしに多くの人が足を運んで大賑わい…という店ではない、正直なところ。

しかし、はこハブの箱主たちはそこがいいと言って間借りしているそうだ。時折車の走行音や下校中の子どもたちの声が聞こえる程度の、静かで落ち着いた空間。知る人ぞ知る秘密基地のような場所。そういった雰囲気を気に入った本好きさんが、ここで箱主をしている。

そして、ここまでたどり着けるのは、きっと本が好き、何かで情報を知って興味を持ちわざわざ足を運んだ、またはたまたま通りかかってちょっと怖い薄暗い階段を登る好奇心が強い方、のどれかだ。つまりここへ足を踏み入れた人は、はこハブの箱主からすると運命のお客様と言えるかもしれない。はこハブの箱主はおもしろい方々だと思う。そしてはこハブにたどり着くのもまたおもしろい方々なのだろう。

ここまで読んでみて、本との出会いを見つけに「はこハブ―Haco Hubooks」に行ってみようと思ってくれた方がいたら嬉しい。また、部屋を圧迫し始めたが処分できずに愛着とともに長年積み上がった本を次の誰かに引き継ぐのも悪くないと思った方は、そろそろ「はこハブ―Haco Hubooks」の箱主になる検討時期かもしれない。なんてね。

50個の木箱にはまだ空きがある。自身の推し作家の本を並べて推し仲間を作るのもいいし、地域の情報発信場所として使うのも面白いかもしれない。小さな木箱にはまだまだ大きな可能性が広がっていそうだ。

というわけで、今回ご紹介したのは、本を中心に集いの場を提供する湯島の箱貸し本屋「はこハブ―Haco Hubooks」。

本との新たな出会いを求めている方は、ためしに一度覗きに行ってみてほしい。

出発点の個性的な「御書印」
出発点オリジナルグッズも展開中

「はこハブ―Haco Hubooks」

【Bookstore&Gallery 出発点】

〒113-0034

東京都文京区湯島2-5-6清水ビル2F


【Bookstore&Gallery 出発点】