Piece -本郷・湯島をかたち創る人・場所を訪ねて-

“ねこ”で繋がった地域の輪 —「王冠印雑貨店」店主 海老原さんに聞いてみた

ねこで有名な街は全国各地にあるものの、ねこ好きの間で最近“湯島”がじわじわ盛り上がりを見せていることをご存知だろうか?

湯島天神と神田明神に挟まれた坂だらけのこの街に、ねこ好きの人々がなぜか集まっているのだ。

その現象のキーパーソンの1人である海老原久美さんを 訪ねた。

彼女は「王冠印雑貨店」の店主であり、「ねこまつりat湯島」の実行委員でもある。

今回はこの「王冠印雑貨店」と「ねこまつりat湯島」についても語っていただいた。

「王冠印雑貨店」店主 海老原久美 さん。お着物が素敵!よく見ると帯がねこ柄

いつの間にかねこが溢れる雑貨店に

湯島の路地裏にその店はひっそりとある。知る人ぞ知る数々のねこグッズを置く雑貨店だ。駅や大通りからも離れ、雑貨店を開くにはあまり向かない立地に思えるが、海老原さんにとっては逆に好立地だったそう。

「すでにたくさんお店がある場所では普通だろうな。どうせだったらちょっと変わったところの方が差別化もできるし面白いんじゃないかと」この閑静な坂の街で勝負に出た海老原さん。始めこそなかなかお客に恵まれなかったそうだが、すぐに多くの人が訪れる人気店となった。今では魅力的で個性豊かなねこたちの品々で埋め尽くされている店内。だが、7年前の開店当初はねことは関係ないレトロ雑貨のお店だったそうだ。なるほど、確かに現在の店内のディスプレイ棚は今ではなかなかお目にかかれない古い木製の机や棚が利用され、レトロ雑貨のお店の名残りも感じられる。しかし、その名残りの内装こそがねこ雑貨が並ぶ今のお店の雰囲気にも合っていて、より商品が魅力的に見えている。

「ペンキ塗ったりとか、ちょっと棚作ったりとか、内装も自分でほとんどやったんですよ」と海老原さん。何でも自身でやってしまうこの器用さには驚かされた。

ねこ雑貨を取り扱うようになったきっかけは、同時期に湯島にオープンした他のお店との“ねこ”の縁。全く異なるお店同士、それぞれねこに縁があったそうで合同イベントを開くことになったという。それが後の「ねこまつりat湯島」へと発展していくことになるのだ。

そのイベントをきっかけに少しずつねこ雑貨を置くようになり、ねこまつりat湯島の拡大やSNSでの発信によって、王冠印雑貨店のねこグッズファンが増え、現在のねこがいっぱいの雑貨店が出来上がったそうだ。

少しレトロな雰囲気の店内。ねこグッズも和なデザインのものが多い

魅力的な作家さんたちとの出会い

王冠印雑貨店にはアーティストや作家さんのオリジナル商品が多く、手作り一点ものの作品もある。取り扱っている品もバラエティ豊かだ。Tシャツやポーチ類、手ぬぐい、インテリア雑貨や、食器類・・・和の雰囲気漂う様々なグッズが並んでいる。現在出店している作家さんは平均30組ほどいるそうだ。この個性豊かな品々を作る作家さんとはいったいどのように出会っているのだろうか。

「いろいろなイベントに足を運んで気になる作家さんに声を掛けたり、作家さんの繋がりで紹介してもらったりしながら徐々に集まりました」ねこ好き同士には何か特別な絆が生まれる気がしてならない。

作家さんの手作り品や、一点ものも多い。作りが少しずつ違う品の中からお気に入りを探すのが楽しい

王冠印雑貨店のオリジナル・コラボグッズとわらび店長

多くの作家さんたちによって制作されたねこグッズと一緒に、王冠印雑貨店のオリジナルグッズも並んでいる。中でも主力は“わらび店長”グッズだ。

わらび店長とは海老原さんが飼っているねこである。しかも王冠印雑貨店の店長というなかなかのポジションでいらっしゃる。茶白の毛並みで、首に巻いた唐草模様の風呂敷がチャームポイント。キャラクターとして実に絵になる。実際に店頭にいるわけではないが、王冠印雑貨店の顔である。このわらび店長とお揃いの唐草風呂敷や、わらび店長をキャラクターとしたクッションやキーホルダーなど様々なグッズがある。わらび店長グッズの他にも多数オリジナル商品を揃えている。その多くが王冠印雑貨店と企業や作家さんとのコラボグッズとなっている。

中でも面白いのが、同じ文京区内にある「あめ細工吉原」さんとのコラボ“飴”だ。湯島天神の梅祭りでたまたま出店が隣同士になったことがきっかけで「オリジナルの飴を作りたいんですけどお願いできませんか」と持ちかけたそうだ。そこでできたのが、わらび店長の「茶白柄チャイミルク味」とかりんちゃん(わらび店長の妹ねこ)の「さび柄梅ごまべっ甲味」の「猫飴」。柄がそっくりな上に味も美味しいという逸品。他にもねこまつりat湯島にも参加している「名酒センター」とのコラボ手ぬぐいなどもある。ねこまつりの際、どちらの店舗にも置けてお互いの宣伝にもなるという優れもの。オリジナルグッズの企画はおおむね海老原さん自身が行っているという。

「王冠印雑貨店」のわらび店長。SNSなどで癒しパワーを炸裂中

ねこで繋がった地域の輪

先述した通り「ねこまつりat湯島」はねこで繋がった数店舗でスタートした。「王冠印雑貨店」とお茶の水の保護猫カフェ「ネコリパブリック」、かき氷で有名な「サカノウエカフェ」の3店舗だ。その後、2022年の春で第14回を迎え、秋には第15回を開催予定だ。

「3店舗でスタートしたイベントですが、2回目には6店舗に増え、コロナ禍で参加店が少し減ったりもしましたが、多い時で18店舗にご参加いただきました」とのこと。参加店もさまざまで、飲食店や小売店、ジュエリーショップ、書店、ギャラリー、ホテル、専門学校から神社まで。コロナ禍という状況にもかかわらず、期間中の来場者数は延べ1万人ほどに達するそうだ。広い会場を借りての展示即売や、ねこ好き同志の交流パーティー、スタンプラリーなどイベントの企画も凝っている。この湯島という狭い地域に18店舗参加、1万人が来場するようになったのは、海老原さんを始め実行委員の方々のアイディアや努力があってのことだと思う。

“ねこ”で繋がったコミュニティーが徐々に街を巻き込み、新たな地域活性の源として成長しているように感じる。

ねこまつりat湯島にかける思い

大きく成長した「ねこまつりat湯島」だが、最後に海老原さんが期待する今後の「ねこまつりat湯島」について聞いてみた。

「もっともっと新しいお店に参加して欲しいし、規模を大きくしたい。ただ単に大きくするのが目的ではなくて、みんなでねこまつりに参加して盛り上げることによって湯島に足を運ぶ人を増やしたいなって。湯島天神だけじゃない、湯島ってもっと面白いところがたくさんあるから。きっともっとたくさんの人に来てもらえる街だと思う。個々のお店が頑張ってるだけではやっぱり力が弱い。もっと横の繋がりを増やしてみんなで盛り上げることで、情報が人の目につきやすくなると思うし、多くの人を呼べる力が生まれる。ねこまつりをきっかけに、湯島ってけっこう面白いじゃんってまた遊びに来てくれたら嬉しい。それが一番理想かな」


ねこ好きを湯島に惹きつけるまたたび的存在の海老原久美さん。今回取材を通して海老原さんのねことねこ好きさんと地域への熱い思いを感じた。

その思いプラス彼女の持つチャレンジ精神や人を巻き込む力が、今の「王冠印雑貨店」や「ねこまつりat湯島」の盛況を生み出しているのではないだろうか。

今後も、海老原さんと新作ねこグッズと湯島から目が離せない。



【王冠印雑貨店】

〒113-0034 東京都文京区湯島3-4-2佐藤ビルディング1階

Tel:03-6806-0252

【ねこまつりat湯島】

〒113-0034東京都文京区湯島3-4-2佐藤ビルディング1階 ねこまつりat湯島実行委員会

※王冠印雑貨店内

Tel:03-6806-0252