とんとくる家の食卓

第10回 これぞ日本の味の素!高知県が発展させた“かつお節”を贅沢に使った「たけのこの土佐煮」

厳しい寒さが幾分和らいだ感もあり、桜の開花もそろそろか……という今日この頃。食卓にも春の味覚が並び始めた時期でしょうか。山菜、ふきのとう、菜の花、鰆、新玉ねぎ…そして忘れてはいけない春の食材といえば “たけのこ” ですね!
春になると楽しみなたけのこ、みなさんはどのたけのこ料理が好きですか? 私の地元は千葉県の中部、いわゆる中房総で、子どもの頃から春になると毎日食卓のメニューがたけのこだらけになっていたほど、馴染みのある食材でした。様々なたけのこ料理がありますが、今回の「とんとくる家の食卓」ではかつお節の旨みがぎゅぎゅぎゅっと染み込んだ「たけのこの土佐煮」をご紹介したいと思います。
なるべく新鮮なたけのこが欲しくて、今回地元からも近い大多喜町産の掘り立ての孟宗竹(もうそうちく)のたけのこを朝イチで買いに行きました。(大多喜町産のたけのこは皮の色が非常に白いのが特徴です。本来このたけのこはエグ味が少ないので水だけで茹でれば十分なのですが、茹で方のご紹介のために今回は米ぬかを使用しました。)

土佐とかつお節の歴史

そもそも、なぜかつお節で煮付けた料理を“土佐煮”と呼ぶのでしょうか? これにはかつお節の歴史と土佐(現高知県)の人々の知恵が大きく関係しています。
少し時代を遡ってかつお節の歴史をご紹介したいと思います。
まず、かつお節の発祥はモルジブ共和国にあるとされており、煮る、燻す、日干しをするという工程が日本のかつお節とも共通しているようです。いつモルジブ共和国から日本へ伝わったかは定かではありませんが、三世紀中頃の古墳時代には既に原型的なかつお節の製法が伝わっていたのではないかとの説があります。
その後も、かつお節の原型は少しずつ発展をし続け、江戸時代に入り食文化が豊かになるとともに一気に花開き、現代のものにかなり近い“かつお節”が登場します。特に独特の製法によって紀州で生産されたかつお節は、“熊野節”として人気になりました。この時期たくさんの料理指南書が発刊され、日本の食事には必需品とも言えるほど、かつお節は定着したものとなっていきました。
その、“熊野節”の製法をさらに進化させたのが土佐藩でした。やっとここで土佐登場! ここから土佐のかつお節が大躍進です! カツオの名産地であった土佐藩はこのかつお節を貿易品にしようと考えましたが、従来のかつお節はカビが生えやすくカビ臭さが品質を落としていました。そこで改善しようと知恵を絞った土佐の人は、風味を落とす悪カビを寄せ付けないため、良カビを先に付着させてしまう逆転の発想で、風味豊かで良質な“土佐節”を編み出すことに成功したのです。なんと画期的な製法! この製法は、長らく土佐の秘法として他と一線を画した独自のかつお節へと進化しました。このカビ付けや燻乾の技術発達により、風味を落とさずに日持ちする土佐節は今まで以上に遠隔地への輸送が可能となりました。江戸など全国へ広まり、日本の台所とも呼ばれる大阪では特に好まれたようです。こうして土佐節が全国へ広まるとともに人々の中へ「かつお節=土佐節」のイメージが刷り込まれ、かつお節で煮付けた料理を土佐煮と呼ぶようになっていったのだと思います。
明治期には土佐の他、薩摩(現鹿児島県)、伊豆(現静岡県)でも良質なかつお節が生産されるようになり、現在もその3地域が日本のかつお節生産量の100パーセント近くのシェアを占めています。

たけのこの茹で方

準備するもの

たけのこ……今回は中サイズ2本
米ぬか……ひと掴み程度
赤唐辛子……1本

たけのこを入手したらすぐに茹でましょう。生のままだとどんどんアクが増しエグ味が出てしまいます。

1. たけのこはよく水洗いをし、先端を斜めに切り落とす。根本のぶつぶつ部分が残っているものはその部分も硬いので切り落とす。さらに2cmくらいの深さで、縦に1本切れ込みを入れておく。(あとで皮が剥きやすい)

2.大きめの鍋に入れ、たけのこがひたひたにかぶるくらい水を加える。

3.米ぬかと赤唐辛子を入れ中火にかける。

4.沸いたら落とし蓋をし弱火にする。そのまま2時間ほど火にかける。(たけのこのサイズや数によって調整を)
※米ぬかが入ると吹きこぼれやすいので火加減に注意する。
※水分が減ったら水を足し、常にたけのこが隠れるくらいをキープする。

5.竹串を根元の太い部分に刺し、串が通るようになっていれば火を止める。
そのままの状態で冷ます。(しっかり冷ますことでよりアクが抜ける)

6.十分に冷めたら皮を剥く。
(このまま保存する場合は水を入れたタッパーにたけのこを漬け密閉する。水を毎日替えれば1週間ほど保存可能)

たけのこの土佐煮の作り方

材料[4人分]

たけのこの水煮……2本(中サイズ)
かつお節……30g(2/3だし用、1/3トッピング用)
醤油……大さじ5
みりん……大さじ4
砂糖……大さじ3(※今回は三温糖を使用しました)
水……600ml

1.たけのこを切る。穂先の柔らかい部分は大きめのくし形切りに、根本の方は厚さ1.5cmほどのいちょう切り。

2.鍋に水を入れ、醤油、みりん、砂糖を全て加え中火にかける。
沸いてきたらたけのこを入れ弱火で5分ほど煮る。

3.かつお節の2/3を入れさらに10分ほど弱火で煮る。

4.残りの1/3のかつお節をフライパンで細かく砕きながら乾煎りする。
器に盛り、煎ったかつお節を振りかけたら完成!
※今回彩りとして塩茹でした菜の花を添えてみました。

おまけレシピ!高知名産の文旦と土佐甘とうを使った「春のカルパッチョ風サラダ」

高知を代表する果物といえばやはり“文旦”ではないでしょうか。土佐文旦などの名称で店頭に並んでいるのを見かけますね。文旦は別名ザボンやボンタンとも呼ばれています。あ! ボンタンアメの! と思った方は私だけではないはず……! 高知の文旦は冬に収穫し室(むろ)で熟成させるので、晩冬から初春に店頭に出回るようです。まさに今が旬!
土佐甘とうは主に高知県内で生産されている甘長とうがらしの一種で、ジャンボししとうとも呼ばれているそうです。とうがらしといっても辛くないです。
今回は桜鯛とも呼ばれ、春が旬の鯛を使ってカルパッチョ風サラダを作りました。こちらも春の味がたっぷりと味わえる一品となっております。

春のカルパッチョ風サラダの作り方

材料[2人前]

文旦……1個
鯛のお刺身……約100g
土佐甘とう……2本
新玉ねぎ……1/2個
リーフレタス……適量
サラダ水菜……適量
ミニトマト……1個(※今回は中玉トマト1/4を使いました)
文旦の絞り汁……1房分(文旦1個のうち1房の薄皮を剥いてから、潰して搾り汁を作る)
はちみつ……小さじ1
粒マスタード……小さじ1/2
塩……少々
黒こしょう……少々
おろしにんにく……少々
オリーブオイル……大さじ1
文旦の皮……適量(トッピング用)

1.文旦の外皮を剥き、小房の薄皮も剥く。(丁寧に)
※うち1房はドレッシング用に搾っておく。

2.鯛を一口大に切る。

3.その他野菜を適当な大きさに切る。

4.文旦の搾り汁、はちみつ、粒マスタード、塩こしょう、おろしにんにく、オリーブオイルを混ぜ合わせ、具材と和える。
器に盛り、細切りにした文旦の皮をトッピングしたら完成!
(※今回文旦の外皮を器として使用しました。文旦の皮はとても香りがいいので、綺麗に剥けたらぜひお試しください)


今回は、高知県(土佐)と関わりの深いかつお節をふんだんに使った「たけのこの土佐煮」をご紹介しました。
まさに今が旬のたけのこ、かつお節の旨みがしっかり染みた土佐煮で是非ご堪能ください。できたら削り立てのかつお節も味わってみてください。もう、香りからして違いますから!
それから、今回かつお節を購入させていただいたかつお節問屋さん(以下でご紹介)から、かつお節の粉を衣類に付着したままにするとカツオブシムシに穴を開けられるので、すぐに洗濯するか粉をよく叩いておいた方が良いとアドバイスをもらいました。
カルパッチョ風サラダに関しては、文旦の酸味と土佐甘とうのほのかな苦味の組み合わせが思いのほか合って美味しかったので、今後も我が家の食卓に登場することでしょう。鯛の他、イカやタコ、サーモンなど季節に合わせて具材を変えても美味しいかもしれません。
それでは、次回のとんとくる家の食卓もお楽しみに!

※厳密にはかつお節は、カビ付け有りの「枯節(主に“かつお節” “かれぶし”の表記)」とカビ付け無しの「荒節(主に“かつお削り節” “花かつお”の表記)」があります。今回は荒節を使用しましたが、わかりやすいよう、文中は「かつお節」の表記にしております。

今回使用したかつお節は、東京都文京区本郷の「鵜飼商店」さんにて購入いたしました。こちらは数種にわたる削り節のほか、煮干し、昆布などを扱う問屋さんです。高級飲食店も御用達の問屋さんで、鹿児島で一本釣りされたカツオを使った本枯れ節など、味に厳しいプロの料理人も太鼓判のよりすぐりの品が購入できます。
店内で削っているので、入った瞬間「白いご飯を!」と言いたくなるほどかつお節の良い香りで溢れています。さすがこだわって仕入れているだけあってお店の方の削り節の知識も豊富なので、削り節ごとの詳細などを聞いてみるといろいろ教えていただけますよ。

鵜飼商店
住所:東京都文京区本郷2-30-9
営業時間:月~金 9:00~18:30 土曜日 9:00~16:00 (日曜・祝日定休)
電話:03-3814-4524
HP:http://ukaikatsuo.starfree.jp/index.html