お祝いの席や、お祭りの日に食べる「ハレの日」のごちそう。全国それぞれの地域ごと、また家庭ごとに食べられている料理があることと思います。お正月、誕生日、節句、入学式の日、部活の試合に勝った日……思い出してみてください。その日、食卓にはどんな料理が並んでいましたか?
今回、そんなハレの日の料理として千葉県房総地域で受け継がれてきた「太巻ずし」のレシピをご紹介したいと思います。
祖母から母へ、母から娘へ…受け継がれてきた技術
房総地域に伝わる太巻ずしは、花や蝶、家紋や文字などさまざまな図柄を彩りよく細やかに配した巻ずしで、「太巻祭りずし」と呼ばれることもあります。近年はレシピ本も多数出版され、インターネット、SNS等でも手軽に作り方を知ることができるようになりました。しかし、これがまたレシピをちょっとやそっと見ただけで綺麗な図柄を作るのは難しいのです。
以前は、お祝いやお祭りの日には朝早くから台所に割烹着を着た女性陣が集まり、せっせと手分けして下ごしらえをし、年長者が難しい図柄を巻くのを見て学び、自らも新しい図柄にチャレンジしていく、というサイクルがありました。“とにかく見て技を覚える”そうやって代々受け継がれてきた太巻ずし。今でこそ女性の繊細な手先とセンスで作られることが多い房総の太巻ずしですが、戦前までは年長の男性が作る係だったようですよ。
太巻ずし「桃の花」の作り方
材料[1本分]
すし飯(白)……300g
すし飯(ピンク)……125g (※今回は白・ピンク共に粉末すし酢を使用しました。べちゃっとならずに便利です)
桜でんぶ……大さじ2
卵……1個 (※厚焼き玉子にし、細く切っておく)
野沢菜……5本 (※20cmくらいに切りそろえておく)
海苔……全形×1枚、1/4×5枚 (※海苔には縦横があるので注意)
1.すし飯を部位ごとに分ける。
白1:10g×5、白2:200g×1、白3:50g×1、ピンク:25g×5
2.巻きすの上に1/4サイズの海苔を敷き、桜でんぶを薄く広げ、その上にすし飯(ピンク)、さらにすし飯(白1)重ねる。
※桜でんぶ、すし飯(ピンク)は均等に平らになるよう広げる。すし飯(白1)はピンクより幅が狭くなるようにのせる。
3.巻きすごと持ち上げ海苔の両端が付かない程度に細く巻き、海苔の隙間から見えるすし飯(白1)を指で少し押し形を整える。同様のものを5つ作る。
※桃の花の花びら部分になる。
4.桃の花部分を作ります。手に持って軽く巻いた巻きすの中に、3で作った花びら用の細巻き5本と、花の中心となる厚焼き玉子を、断面を意識しながら並べる。
さらに花びらの隙間に野沢菜を1本ずつ挟み込む。
※型崩れの原因になるので手のひらは開きすぎないように。
5.4全体を巻きすでしっかり巻き、形を整える。
6.巻きすに全形サイズの海苔を縦向きに置き、左右を2cmほど開けてすし飯(白2)を広げる。
※厚さが均等になるように。
7.6の中央に5をのせ、巻きすで左右を寄せつつ、隙間に残りのすし飯(白3)を均等にのせ、最後に左右の海苔をしっかり合わせ形を整える。
8.潰さないよう丁寧に切り分けて完成!
※切る際は包丁に酢を塗るとご飯や海苔が付きにくい。
おまけレシピ!足の早いイワシを美味しく食べる「いわしのつみれ汁」
九十九里沿岸では昔からイワシが豊富に取れたため、房総にはさまざまなイワシ料理があります。その中でもイワシのすり身を生姜や味噌と一緒に練って団子にしたつみれ汁は手軽に作ることができ、今でも多くの家庭で食べられている料理です。また、魚へんに“弱”と書くほど傷みやすいイワシを生姜などの薬味と合わせ火を通し汁物にすることで、お腹に優しく、日持ちするように工夫されてきました。
いわしのつみれ汁の作り方
材料[2人分]
せぐろ(カタクチイワシ)……4、5尾 (※真イワシで代用もできますがやや脂が多めです)
味噌……大さじ1/2
生姜……10g
大葉……3枚くらい (※お好みで)
豆腐……1/4丁 (※お好みで)
長ネギ……1/4本くらい (※お好みで)
ミョウガ……1個 (※お好みで)
小麦粉……小さじ2
水……2カップ
醤油……大さじ1
塩……ひとつまみ
※その他お好みで、大根やにんじんを具として入れてもおいしい。
1.せぐろの頭、ヒレ、内臓を取りよく水洗いし下処理をする。
2.手開きをし背骨を取る。
3.せぐろの身を粘りが出るまで包丁でよく叩く。
※ある程度刻んだらすり鉢やフードプロセッサーを使ってもよい。
4.3に味噌、きざみ生姜、きざみ大葉、小麦粉を加えさらに叩く。
※小麦粉の代わりにつなぎとして卵や長芋を使ってもよい。
5.鍋に水を入れ火にかけ、沸騰したら4を2本のスプーンで団子状にし、湯に落とす。
6.つみれに火が通ったら豆腐を入れ、ひと煮立ちしたら塩と醤油を加える。
7.盛り付け後、千切りにした長ネギとミョウガを散らし完成!
今回は、千葉県の郷土料理「太巻ずし」をご紹介しました。
地域ごと、家ごとに代々伝わる独自の図柄もあります。しかしその手間や難易度の高さゆえに、太巻ずしが家庭で作られることが減ってしまい、その伝承も風前の灯火に……この伝統もこのまま消えてしまうのか。
と思いきや、近年キャラ弁ブームなどにより、図柄を作り込んだ巻ずし人気が再燃。SNS映えもするので、お料理好きの間で太巻ずしの技術がじわじわ広がり始めています。かわいいキャラクターなどの図柄をオリジナルで考案してみても面白いのではないでしょうか。お子さんにも喜ばれると思いますよ!
それでは、次回のとんとくる家の食卓もお楽しみに!
今回使用したお米は、東京都文京区向丘の「良米工房 堀江米店」さんにて購入しました。
お米マイスターのスタッフさんがいらっしゃるので、お米選びの相談もでき、とても心強い町のお米屋さんです。今回、太巻ずしにするなら「酢を混ぜた時に粘らず、あっさりとしたササニシキがおすすめ」と教えていただきました。他にもたくさんの品種のお米を揃えており、米粉を使ったスイーツなども販売されています。
良米工房 堀江米店
住所:東京都文京区向丘2-12-2
電話:03-3821-3500
HP:horie-kometen.jimdofree.com
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