つたえる

かるたの伝統と魅力を伝え続けていく「奥野かるた店」

ギャラリースペースもある室内ゲーム娯楽品の専門店

学生やサラリーマンが絶え間なく行き交う神田神保町の白山通り沿いに昔ながらの室内娯楽品が展示されているショーウィンドウがある。
懐かしさに惹かれ店内に足を踏み入れると、いろはかるた・百人一首をはじめ、囲碁・将棋・麻雀・花札・トランプ・パズルなどが陳列されている。
子どもの頃に遊んだことがある遊戯を眺めながら2階へ上がると年代もののいろはかるたや百人一首、ボードゲームなどが並ぶギャラリースペースになっていた。
そこは、オリジナルかるたの企画・製造・販売を行っている「奥野かるた店」である。

1階では、かるた・花札・将棋・麻雀牌・カードゲームなどの商品が並んでいる

 

展示コーナーや昔なつかし掘り出し品やボードゲームが陳列される2階ではイベントも開催されている

 

ポルトガル語が由来の「かるた」

かるたといえば、読み手が読んで札を取り合う「いろはかるた」や「百人一首」が連想される。最近ではマンガや映画の影響で注目された「競技かるた」や、上毛かるたが有名な「郷土かるた(ご当地かるた)」を耳にすることも多い。
そもそも「かるた」とはポルトガル語(Carta)で手紙や紙製の板という意味である。日本では近代頃までトランプや花札などのカードゲーム全般を総称していた。奥野かるた店でも“かるた全般”を扱っている。

室内ゲーム娯楽品の問屋からかるたメーカーに

奥野かるた店は大正10年に将棋棋士だった奥野一香氏により、室内娯楽品の問屋「奥野一香商店」としてスタートした。昭和54年、現住所に店舗を構え「奥野かるた店」となる。当時、1階がかるた・花札・将棋・麻雀など和風の娯楽品、2階にテレビゲーム、手品、ボードゲーム、パズルなど西洋と現代の娯楽品という形で陳列していたが、平成21年に日本の伝統文化を次世代へ発信する目的で2階にギャラリースペースを設けた。

地味ながらも長く愛され続けるようなかるたをつくり続けていきたい

かるたは遊びながら自ずと知識が身につくことが大きな魅力である。
子どもの頃に馴染んだ「犬棒かるた」や「キャラクターかるた」以外にも、現在では「宮澤賢治木版歌留多」「世界史かるた」「感染症かるた」など様々なテーマのかるたがある。

「かるたは題材さえあれば何でもかるたにすることができる」と話してくれたのは、三代目にあたる代表取締役 奥野誠子さん。個人や自治体など、かるた制作の依頼や企画の持ち込みもあるという。「かるたは何百年も愛され続けている。花火のような一瞬の輝きはないかもしれないが、地味ながらも長く愛され続けるようなかるたをつくり続けていきたい」と思いを語ってくれた。

「今の時代、スマホがかるたを読み上げたり、つくったりするアプリもある。ITだアプリだといってもそもそも人間はアナログな生き物。いずれ機械(デジタル)に触れていく。だからこそ、その前に「アナログ商品がちゃんとあるんだよ」ということを教えてあげられる。かるたはなくならないと思う」と続けて述べられた。

ワークショップや落語会などもギャラリースペースで開催

2階のギャラリースペースでは、かるたの展示のほかに、ワークショップや落語会など、昔ながらの遊びや日本の伝統文化を次世代へ発信していく活動も行っている。
6月6日(木)には、落語会 神保町かるた亭が開催される予定だ。

昔はおもちゃがなくても牛乳瓶のフタや鉛筆など身の回りのものを使って遊べたもの。遊ぶものが多すぎる昨今だが、当時の文化が忘れられないように、消え去っていかないように伝えていきたい。
「奥野かるた店」は、これからも先代から想いを受け継ぎ、かるたの伝統・魅力を伝え続けていくだろう。

神保町かるた亭
日時:6月6日(木) 18時30分~19時30分
出演:春風亭昇也 ゲスト:立川寸志 司会:長井好弘(読売新聞社記者)
会場:奥野かるた店(千代田区神田神保町2-26) 神保町駅 A4出口より徒歩3分
料金::前売800円/当日1000円
予約:TEL:03-3264-8031 FAX:03-3230-1512 toiawase@okunokaruta.com